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洋食 桜

Satoru Shibatani

シバタニさんは、面白い経歴の持ち主だ。

そして、やさしい。

「MacでDTPやってました」

【最初からフレンチの道に入られたんですか?】

 

20歳の頃に、下関から東京に出たんですけど

最初は、あっちフラフラ、こっちフラフラしてて、朝、電話で『今日は仕事ないですか?』『今日は飯田橋に行って!』みたいな感じで、

現場に行く様な日雇いの仕事なんかで食いつないでましたね。(笑)

 

その後、少しして、版下屋に入って、DTP*の仕事を始めました。

ソニー出版からの仕事がメインで、その当時としてはまだ珍しくMacを大量導入してデジタルで始めた様な会社で

そこで、Macの使い方を覚えました。

性に合ってたんでしょうね。すぐにマスターして、最終的には独立してフリーで仕事を受けてました。

 

でも、その内、面白く無くなってきて、一旦、下関に戻ったんです。

その時たまたま、ある施設の食堂で働き始めたのが、料理人人生の始まりでした。

 

そこで作っている内に、「美味しいから、店だしたら良いのに」というお客さんの言葉を真に受け(笑)

九州のフランス料理店で働き始め、フレンチの道へと入りました。

 

その後、再び東京へ。

今度は、フレンチの腕をもっと磨く為の上京です。

 

 

*DTP=desktop publishing パソコンで印刷物の版下原稿を作成する手法。それ迄は、紙を貼り合わせたりしてアナログ的に版下原稿は作成されていた。

 

 

 

同じ人に同じ料理は出さないという

暗黙のルール

随分遅いスタートだったんですが、三十歳中盤から、東京のフレンチ店で本格修行をスタートしました。

もう入った時点で、そこのシェフと同年代みたいな感じですから、認めて貰うのに必死でしたね。

朝六時に出勤して、帰るのは一番最後。

 

それまでに見て覚えておいたシェフの仕込み作業を

毎日、シェフが来る前の早い時間に行って、シェフが出勤した時には、本来シェフがやる仕込みを全て代わりに終わらせておく様にしました。

 

そんな事をしていると、少しずつ察してくれる『ちょっと今日は肉焼いてみる?』とか。

 

全てシェフのやり方を見て盗む、オーダー(注文)も全部見てメモしておく、そうするとある日突然、『このオーダー、お前やってみる?』

とチャンスが廻ってくるんです。

でもそこで出来なかったら「帰れ」って言われるんです。

そういう世界でした。

 

どこに行っても、シェフから『お前はもう歳なんだから、人の仕事をドンドン取っていかないと上に上がれないぞ』と言われた事を忠実に守り

仕事を真剣に頑張ったんで、一、二年でどんどん上がっていきました。

 

料理の世界って、無理矢理、人の仕事を取っていかないと上がっていけない世界。

黙って言われた事だけやっててもだめなんですよ。

 

フレンチは、常に革新を重ねて行かなければならない料理なので、毎日、いつも料理の事ばかりを考える日々でしたね。

次の季節の料理を考えておかなければならないし。

毎日、大量の仕込みをしながら、試作もして、料理も考える。頭フル回転ですよ。

 

街場のフレンチは、基本、同じ人に同じ料理は出さないという暗黙のルールが有りましたし。

常連さんが来ると、その時、通常出してるコース料理とは別の料理を出すという感じです。

そういった意味では、引き出しが沢山ないとフランス料理の世界では、勤まらないです。

だから、一握りの人しかシェフと呼ばれる人になれないものなんですよね。

デミは一から何日も掛けて作ってます

3年前に帰関して

「洋食 桜」を開店

デミ(デミグラスソース)は手間暇を掛けて作ってます。

下関でデミを引いてる所は自分の知ってる範囲では見当たらないですね。

缶入りの既製品を使う所も多いですけど、全然美味しさが違うんですよ。

 

是非、ビーフシチューを食べてみて下さい。

本当のデミの味を味わって欲しいんです。

食べて頂ければ、その違いが分かると思います。

 

【これから、街中に店舗を出すとしたら、どんなお店が良いですか?】

 

そうですね〜。もし店舗でやるなら、綺麗な所ではやらないです。

ボロボロで、床が、ギーッっていう様な所でやりたい(笑)

仕事終わりで油まみれのおっさん達が食べに来る。

30年ぶりに来ても、味も店内も変わらないという店を目指したいですね。

 

フレンチとは真逆の世界観に

魅了されました。

【洋食の道に入ったきっかけは何だったんですか?】

 

東京を歩いていて、たまたまもの凄く古い佇まいの店を見付けたんですよ。

そこで、なんだろこれ?と思って入ったのが最初の「洋食屋」との出会いでした。

それまで、「洋食屋」というものを見た事が無くて

「洋食屋」という、自分が知らないジャンルが有る事にショックを受けたんです。

一種のカルチャーショックですよね(笑)

 

「洋食屋」は、昔からやっている店が多いから、古い佇まいの店構えの所も多い。

そういうお店で、毎日、何十年も同じメニューを腰の曲がったおじいさんが作ってる訳ですよ。

フレンチとは、真逆の世界ですよ。

 

それでも、結構繁盛している。

そういう佇まいも含めて「洋食屋」が好きなんです。

 

そんな都内にはまだ結構残っている「洋食屋」を探し出して通う様になってから、

その世界観に、すっかり魅入られてしまい、「フレンチ」の世界から「洋食屋」の世界へと転向したんです。

 

“フレンチは、高い食材で最高峰の料理を作るという世界”で

“洋食屋は、安い食材で、どれだけ美味しいものをだせるかという世界”

言い換えれば、洋食屋は日常でフレンチは特別な日という対極とも言える世界かも知れませんね。

 

仕事終わりの作業服を着たお父さん

家族連れ

老人

老若男女が食べに来る

食べる人を問わない。

それが洋食だと思います。

[Interviewer]Tsugu

[Photographer&Editor]YASUMURO

洋食 桜

シバタニ サトル

 TEL:080-1645-0360

 ADDRESS:山口県下関市中之町1-16 長州屋台村 内

 OPEN:17時〜24時

 CLOSE:不定休